ビジネス本マニアックス

内藤による働く人のためのビジネス本紹介サイト⇒自身の30歳の就職活動についても書いたり。10年くらい更新止まっています。⇒「はてなダイアリー」から「はてなブログ」へ移転しました

 感動の東京工科大学 (2004年4月3日)


先日、仕事の関係で東京・八王子にある東京工科大学に行ってきた。JR八王子みなみ野駅という最近開発されたばかりの殺風景な駅前からキャンパスまでは徒歩で30分くらい。駅前からは学校運営の専用大型バスがピストン輸送をしており、バスに乗って5分くらいでキャンパスに辿り着く。

キャンパスは、広く、公園のような美しく整備された丘陵のなかに、明るい茶色のタイルですべておおわれた美しい巨大建造物が並ぶ。敷地の随所には、趣味の良いアートが飾られている。


http://www.neec.ac.jp/campus/campus/hac.html
リンク先は併設の日本工学院八王子校(キャンパスを共有している)。


いや、正直な話、ここまで美しいキャンパスは内藤は見たことがなかった。内藤は結構あちこちの大学を見ているが、ここまでゴージャスなところは見たことがない。たぶん日本一素晴らしいと思う。ほとんどの建物は、かなり気合の入ったデザインで、すべて統一されたデザインをもっている。まるでギリシャ神殿のようだ。そしてどの建物も同じ明るい茶色のあるタイルを使うことで統一されている。公園部分も同じタイルだ。使われているタイルは何百万個だろうか。整備のことを考えて汚れにくいものを使っている。また、コンクリート打ちっぱなしのところは一切ない。必ず防水処理されていて、随所まで気を配って建てているのがわかる。見れば見るほどため息が出るくらいだ。また、キャンパス内には、マクドナルドや、吉野家なども店舗を持っており、南国のリゾート施設のような美しさと楽しさである。


なんというか、これはもうある種のディズニーランドである。とにかく素晴らしい。細部まで気を配られたテーマパークぶりに歩いていて何度見てもため息が出てしまう。校舎までのピストン輸送用の大型バスは、内藤の見た限り、どれもほぼ新品同様でピカピカであり、10台以上保有されている。


この凄さは実際に見てもらわないとなかなか分からないと思う。キャンパスの広さでは、北大とかここよりも広い大学はある。しかし、ここのゴージャスさは特別である。例えば最近は、古い校舎で有名だった東大は、この10年くらいで猛烈に建替えを進めており、結構かっこいい建物も建つようにはなってきている。しかし、ここのゴージャスさは敷地全体がゴージャスなのだ。このキャンパスには湖もあり、そこにはギリシャ神殿のような建物が張り出し、丘陵の中には地下施設があり、最深部にはコージェネシステムがあり、キャンパス全体の電力と温水をまかなっているらしい。このギリシャ神殿のような巨大構築物と丘陵のキャンパスの中で歩いていると、自分自身がちっぽけな存在に感じてしまう。デザインが統一されていることもあって、強烈な圧倒感だ。すべて人工の計算された敷地の圧倒感は、ディズニーランドに近い。


でまあ、ため息ばかりついていたのだが、当初、内藤は大学としてはどうなんだろう?と思ってしまった。ここまでのキャンパスを作るというのはどれだけのお金がかかるのか想像がつかない。八王子の辺鄙なところだから地価は安いとはいえ、キャンパスの総工費は1000億円以上はかかるのではないかとか思った。巨額の工費はとうぜん私学なので学生が負担するわけで、金儲け式大学でどうなのかなあとか思った。


でも、よく考えてみるとそういう見方はおかしいと気がついた。というのも、内藤には、大学教育は清貧が良い、という思想に毒されていることに気がついたのだ。「ゴージャス→金儲け→良くない」なのである。でもって、「貧乏なボロ校舎→建物に金をかけてない→教育に金をかけている→良い」と思い込んでいることにも気がついた。


よくよく考えてみれば、校舎がボロいことと、そこで提供される教育の質は比例しない。確かに、国公立大学であれば、国から支給されるお金をどこに配分するか、ということで、建物に使うよりも教育や研究にお金を振り分けたほうがいい、という理屈は成り立つ(大学法人化した今はちょっと違う)が、ここは私立大学である。そうした社会主義的な思想ではいけないのである。内藤にしてもさんざん社会主義的な思想に冒されてきたので、ついそう考えてしまうのである。


つまり、ここは私立大学なのである。民間のビジネスなのだ。学校の存続のためには、まずは入学者を集めなければ始まらないのである。そして、入学してくる学生からの授業料で設備が運営されるわけで、学生は大学からすればお客さんであり、大学は、さまざまなサービス(教育を含む)を提供しているのである。逆に言えば、お客さんが入ってこなければ、ろくなサービスは提供できなくなるし、経営も立ち行かなくなるのである。


首都圏では、ベビーブーム以降あちこちに作られた遊園地の閉園が相次いでいる。お客さんが来なければ閉園せざるを得ない。これは大学も同じなわけだ。むしろ、大学経営はレジャーランド経営に似てるのだろう。もちろん、入場者にスキルを身につけさせるという点は違うが、他方、そんなことは入場する前には分からない。むしろ入場前には、そこに入るのが楽しそうと思わせなければいけない、という点では、大学経営はレジャーランド経営にとても似ている。しかも、どちらもキャスト(大学教員)を雇い、エンターテインメント(講義)を提供するわけである。


でまあ、大学経営を考えると、集客がとても重要なわけである。高校を卒業してくる学生のうち、どれだけのシェアを取れるかが重要だ。そしてさらにそうした学生は少子化でどんどん減ってくるわけであるから、競合の大学との激烈な競争になる。


ここで学生側の大学選びを考えると、まずは偏差値の少しでも高い学校に行こうとする。そのほうが歴史があって、教育が充実していて、就職もよさそうであるからだ。でも、自分の学力で入れそうなところという観点で選ぶ場合、その学生にとっては数校がターゲットとなる。その中で、4年間という時間を過ごすに値するところはどこか?となるわけだ。で、大学は、学生に通常4年間という時間を提供するビジネスであり、就職予備校としての機能と、4年間のキャンパスライフという機能を提供している。


大学側の競争戦略としては自校の偏差値ランクの中で競合する他大学よりも、就職予備校としての機能と、キャンパスライフという点で相対的に強ければよいことになるわけだ。


となると、同じ偏差値の大学で言えば、他方、校舎が狭くてボロい建物がある大学よりも、まるでディズニーランドのようなキャンパスに、先端(風)の学部がある大学のほうが格段に魅力的だ。というのも、そうした大学のほうが、自分の力を伸ばしてくれそうな気がする上に、素敵なキャンパスライフを送れそうであるからだ。その点で、東京工科大学の素敵なキャンパスと、先端な学部と、若い教授陣というのは、とても魅力的で、学生へのアピールも優れているように思う。


つまり、大学をディズニーランド経営のような経営と考えると、東京工科大学のキャンパスは、他大学に対する徹底したかつ効果的な差別化になっていて、きちんと経営を考えているのだなあと思わせるものなのである。偏差値を上げるだけが戦略ではないのだな。


内藤は、ついついボロキャンパスは良い大学、という思い込みをしていたが、考えてみると、ボロキャンパスにダメ大学というのも数多くあり、そんな中からすると、東京工科大学のゴージャスなキャンパスというのは、キャッシュフローさえうまくいけば、学生にとっても経営陣にとっても良い循環が起きる重要な生産設備なんだなあと思ったのである。経営陣からすれば、少子化の中でも学生を安定的に確保でき、学生が多くくれば経営の採算はよくなり、学生は満足のある教育と素敵なキャンパスライフを受けられるわけである。


というわけで、結構、眼を開かされたゴージャスキャンパスであった。ほんと凄いのである。キャンパスについて言えば夢の大学だと思う。まさにリゾート。パラダイスだ。



ちなみに、ここの中にあるマクドナルドは珍しいカフェテリア式だ。自分でトレーを取って、列に並んで、棚にある各種のハンバーガーを取り、ポテトを取り、ドリンクのカップを取って会計する。どうも学生が昼に殺到するから、スループットを上げるためらしいがどうなんだろう。結構新鮮であった。