簡単な論理チェックのやりかた (2004年7月19日)
本を読む速度、のところで書いたのですけども、ビジネス書(に限らず)を読むときに、論理の力があると理解が速くなるという話でした。具体的に論理の力を伸ばすには、ロジカルトレーニングとか題された本を読んで訓練すると良いのですけども、内藤の思いつく範囲でどんなところをチェックしているのか書いてみたいと思います。
さて、ビジネスで大切な論理はいくつかあります。まず大基本から言いますと、その読んでいる文はいったい何を語っているのか、ということです。というのも、何かを語っているように見せて、何も語っていない文が世の中に結構あるからです。そういう文章がたくさん書いてある本は読んではいけないと内藤は思います。分かったような気にさせて何も分かるようにならない、という奴です。その識別は結構簡単に出来ます。
○名詞や動詞の指示対象を自分の中で言い換えるなどして明確にしていく
文章の中には名詞や動詞が多く使われています。←たとえばこの文章では、「文章」「名詞」「動詞」「使われている」なんかがそうです。こういう言葉を一個一個明確に意識します。いったい何を指しているんだろうか?と。あまりにも意味が明らかな言葉はいいのですけど、新しいことを学ぶ場合、読む文の中にはいくつかあまり良く知らない単語が入ってきます。そういう単語を適当に流すと理解が深まりませんし、適当な文言を書き並べる文章屋にだまされることになります。しつこいくらい、名詞や動詞の指示対象を自分の中で具体的に考えて理解していくことが論理に強くなるコツの一つです。
言葉は概念を表します。我々は言葉があるゆえに抽象的な思考が出来るようになるのですが、他方、いいかげんに言葉を日々扱っていると、多少良く分からない言葉が出てきても、なんとなーくこんな感じ、みたいによく分かっていないけど、分かった気分で言葉を受け流してしまいがちです。というのも、一個一個考えるのは面倒くさいから。それはわかります。
でも、論理に強くなるためには、そうした一つ一つの言葉に対して敏感にならないといけないと内藤は思います。かなり具体的概念である「車」とか「りんご」なんかは指示対象を考えるのは簡単ですが、実は抽象概念といえども、似たような概念間での違いを明確に出来たり、その関係を明瞭に示せるはずなのです。それが本当に理解した、ということです。適当な文章を書き散らす人(もちろん内藤も含まれるかもしれませんが)は、そこらへんをわざと衒学的な難しい抽象概念を散りばめてごまかしにかかります。注意しなければいけません。現実を変えていくパワフルな考え方は、必ず具体的な言い換えが可能ですし、抽象的な内容でも、必ず現実に具体的に適用できます。
○因果関係と相関関係と時間の先後関係を区別する
AだからB、というものが因果関係です。ゆえに、Aという原因となる事象を起こせば、Bという結果が得られる、と考えるわけです。とてもパワフルな考え方です。ただし、世の中にはそれほど強力に因果関係が言えるものはそれほど多くありません。だから因果関係と思い込む前に、それが単なる相関関係でないのか、単なる時間の先後関係でないのか吟味する必要があります。
相関関係とは、簡単な例を出せば、A新聞を購読している家庭は平均所得が一般よりも高い、みたいな関係です。単に統計を取るとそういう相関性が見られたという話です。A新聞を取れば所得が上がる、という因果関係が立証されたわけではないのです。だから、こういうことは、相関関係と強く意識して、因果関係ではない、と区別していかなければいけません。そうでなければ、所得を増やしたいがためにA新聞を取る、という非合理的な判断を下すことになります。因果関係は厳密にテストして立証されていないものは信じてはいけないのです。実際は、因果関係があるかな〜とか思いながらビジネスではあれこれ模索していくことになります。
時間の先後関係とは、Aというセールスプロモーションをしたら、売り上げが10%上がった、というようなものです。これも因果関係があるかもしれないし、ないかもしれません。単にAという事象が先にあっただけかもしれません。担当者はそこに因果関係を見出したいわけです。これも世の中にいろんなストーリーを語る人がいるので、それが本当に因果関係なのか、単に時間的に先に起きたことが原因のように見えるだけなのか、区別しないといけません。
上記の関係は、図で書くときはたいてい、A→B、などと表現したりします。本当の因果関係は、A⇒B、だけです。説明者の能力によって、相関関係もA⇒Bとか、時間の先後関係もA⇒Bと表現したりするので、文章を読むときには注意が必要なのです。
○包含関係を図示する
世の中にはさまざまな事象が起きます。我々はこれらをそれぞれの性質を見出して分類していくことで、物事を整理することが出来ます。例えば、不動産の物件では、価格、築年数、駅からの距離、部屋の広さ、部屋数、方角、設備、などなどで、それぞれの物件がいろいろな性質を持っています。特定の性質で物件を分類してやることで、ゴチャゴチャした内容が綺麗に整理できたりするわけです。例えば築年数で、5年未満と5年以上で分けてしまうとか。この包含関係は図でかけます。この図が綺麗に書けるかどうかが整理がうまくいくかのポイントです。どの性質で分けるか、とか、どの性質にどの基準で二者に分けるかで、整理され具合が決まってきます。整理上手であれば、世の中に起きている無数の取引案件をクリアーに整理できます。プロはそういう基準を持って整理しています。仕事をしていてもアマチュアは意識していません。また、新しい分け方を常に考えることが大切です。新しい整理の仕方によって革新が生まれます。そのためには、常に図をいろいろ描いて分類してみることが大切です。分類のコツは、分類の要素は2個に限ることです。価格対広さ、とか。そうすれば2次元のグラフで書けます。たくさんの要素でやると、直感的に分かりにくくなるのでよくありません。要は考えを整理するために、要素を絞って図示するということなのです。
こんなところです。上記の3つを意識するだけで結構物事は明確になります。あとは、瞬間的にそれが出来るかは練習量に比例します。頭の良し悪しではありません。
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