ビジネス本マニアックス

内藤による働く人のためのビジネス本紹介サイト⇒自身の30歳の就職活動についても書いたり。10年くらい更新止まっています。⇒「はてなダイアリー」から「はてなブログ」へ移転しました

内藤式 仕事分解管理術 (2004年7月27日)


  さて。前のコラムで、忙しさは精神が感じているものがほとんどで、頭の使い方を変えれば日々が楽になれるのではないか、という話まで書いた。


  精神的に忙しくなる理由は何かといえば、一個一個の動作でイチイチ、「どうすればいいか」と悩むからである。個々の動作では、いちおう最善な動作というものがある。唯一解はなくても、数個はある。ゆえに、仕事ではまずは全部の仕事をパターン化して、最善の動作を先輩などから教わるなり見て盗むなりして頭と身体に叩き込んでしまうのがベストである。常に正解パターンを意識して、新しい作業では正解パターンを探し、見つけたらそれを守るようにする。


  仕事は最善の動作を研究して、それにパターン化してしまい、パターンをこなすようにすると仕事の速度と質が上がる。新人は出来のいい先輩や上司から教わるなり、見て盗むなりするのが最短である。別な言い方をするとマネをするのである。


  流れ作業などでは、一人の作業者が毎回決まった作業をする。一人の人間が単純なパターンの最適化された動作を繰り返すので、動作のたびに作業者が悩むことがなく、生産効率が上がるのである。これは、20世紀の初頭、非熟練労働者を急場仕立てで大量生産する工場の作業者として育成するために考えられた手法である。当時の作業者の平均的能力が低いので、作業を非常に単純化させることで最適作業パターンを覚えこませたのである。ゆえに、作業者の能力が上がれば、複雑なパターンを覚えてもらうことも出来るようになり、さらに生産性が上がる。日本の生産能力の高さは、作業者が複雑なパターンを覚えることが出来るということに寄っている。ゆえに、最近では一人の作業者が最初から最後まで作り上げるように「一人屋台式」や「セル生産方式」などでも従来以上の生産性を上げるようになってきたのも、作業者が複雑な最適パターンをアドバイスを受けつつも自ら見つけ、そのパターンに沿って作業が出来るだけの能力や意思を持っているからである。


  つまり、作業の最適パターンをすばやく探し出し、そのパターンに沿って処理できるようになることが仕事の処理能力を上げる上で最強の方法であり、それによれば、個々の動作で作業者が悩むことがなくなり、精神的に疲れることもなくなるのである。いつもパターンを意識することが大切だと思う。



  と、ここまである意味当たり前のことを書いてきた。でも、事務作業とか、もっとクリエイティブ?な仕事の場合は違う、という人もいると思う。でも同じなのである。ただ、作業自体が組み合わせになっていて複雑に見えるだけなのだ。そこで、事務系の作業の場合は、次の操作が必要になる。


  事務系の一見すると複雑な作業は、一体として捉えるのではなく、個々の作業に分解する。この分解して作業は最適パターン化できる。つまり、仕事は常に個々の作業に分解し、最適パターン化し、パターンに沿って動く、のである。作業を個々の単位作業まで分解するのにあまり時間はかからない。1時間に5分もあれば十分だ。


  具体的に例を挙げれば、内藤の仕事で言えば、見積もりを出す、というものがある。内藤の扱う商品の場合、海外メーカー品で特注品であることが多いので、一言で「見積もりを出す」といってもたくさんの単位作業が含まれる。「顧客の要望仕様を整理する」「不明点を顧客に確かめる」「問い合わせるメーカーを選定する」「メーカーに問い合わせをかける」「メーカーの回答を要望と合っているか確認する」「お客さんに見積もりを出す」というふうに単位作業に分解できる。これを個々の単位作業ごとに最適パターンを持っていれば、あっという間に仕事が終わるし、品質も保持できる。また、個々の単位作業のパターンを改善していけば仕事の質も上がっていく。とにかく分解→パターンで処理、なのである。



  さて、ここで、作業を単位作業まで分解して、パターン化して処理していくというところまで来た。パターン化を意識すると、個々の動作ごとに逡巡するというのは、初回だけで済むようになり、見出した最適パターンで当てはめて処理できるようになる。次は、精神的な悩み解消の決め手、極力、頭で覚えない、紙に覚えさせる、である。


  よほど記憶力がいい人を除いて、上記で分解した単位作業を頭に覚えておいて、「ああ、今はこれをやって、次にこれをやり、その次にこれをやらないと」と覚えていることは頭の大きな負担になる。これらはすべて紙に書いてしまう。紙に書くことで覚えているという大きな負担がなくなる。つまり精神的にモヤモヤしたものがなくなるのである。なんでもないことのようで、実はとても大きい。マトモなビジネスマンは手帳やノートにせっせとメモをきれいに書いているが、それは頭で覚えないためである。出来ない人間に限って、手帳やノートにきちんとメモを書いていない。


  分解した単位作業は紙に書いて、後は忘れてしまう。こう書くと、忘れたら困るとか思う人がいるが、そんなことはない。人間はシングルタスクであることを忘れてはいけない。一度に一つのことしか出来ないのが人間なのである。つまり、ある単位作業をしているときは、それに没頭すべきで、他の単位作業をやりかけたり、次の単位作業を思い浮かべたりしてはいけないのだ。それをやると、目の前の単位作業がおろそかになる。しかも、そうやって思い浮かべたり、やりかけたりすることには何のメリットもない。単位作業を途中でやりかけて他の単位作業に切り替えるスイッチ動作はかなり時間がかかる。ミスも増える。それなら、一度やりかけた単位作業は、最後まで集中してやりぬくのである。これが効率がいい。そして、作業が終わったらメモした紙を見て、次に何をすればいいか見るのである。単位作業をやる→紙を見て次に何をやるか選ぶ→単位作業に没入、という繰り返しなのである。ゆえに、やり忘れることはない。


  よって、単位作業に分解したら、紙に単位作業をすべて書き出し、順番に取り組んでいく。このとき単位作業中は終わるまで他の作業のことをやらないし、考えもしない。終わったら、また紙を見て次に何をやるか選ぶ。



  さて、ここで単位作業を書くときに、内藤なりのコツがある。単位作業は付箋に書くのである。ポストイットにそれぞれ書く。例えばこんな感じだ。


[A氏見積もりの件、仕様確認 30分]
[A氏見積もりの件、メーカー選定 10分]
[A氏見積もりの件、メーカーに問い合わせ英文作成 30分]
[A氏見積もりの件、メーカー回答待ち ※7/1]
[A氏見積もりの件、見積もり書作成 20分]


  ポストイットに書くのは結構重要なポイントだ。ポストイット一枚一枚に個々の単位作業を書くと、【今処理】【本日処理】【明日処理】【近日中処理】というカテゴリにして、壁とか机とか紙とかに貼り付けて分類できるのである。つまり、緊急性に応じた単位作業を分類するためなのである。


  作業によっては緊急性を要するものとそうでないものがある。A氏に見積もりを出す、という仕事でも、その中の個々の単位作業によっては緊急なものとそうでないものに分かれる。例えば、今日のうちにA氏に仕様確認はやっておくが、メーカーへ問い合わせるのは明日でいいか、とか。別件で緊急の案件が入っていた場合はやむをえない。これを、全部明日に回すと、A氏からすると明らかに後回しにしているように感じるだろう。時間に余裕があれば、仕事を一貫してやりぬけるが、実際は細切れにならざるを得ない。この細切れ化していく仕事をうまくマネジメントする方法が、仕事を単位作業に切り分けて、単位作業ごとに緊急度を管理する方法なのである。ポストイットに書くことでソートがいつでも出来る。例えば、先ほどの例では、メーカーに問い合わせる単位作業を明日に回したわけだが、明日になれば、それは緊急性が上がるので、そのポストイットは【本日処理】のところに持ってくる。一枚の紙に書くのと違って、随時、最適な作業配分が出来るのである。


  分解した単位作業は一個ずつポストイットに書く。それは、単位作業を緊急性に応じてソートできるからである。単位作業は出来る限り、細かな単位まで分解して書く(例 ○○仕様確認のためにA氏にtel、など)。かつ、具体的に書く。ポストイットを見て作業内容が思い浮かぶくらいでないと、一覧性が悪化する。


  さらにこの方法にはメリットがある。仕事はたくさんやってくる。先ほどの例で言えば、A氏への見積もりだけでなく、B氏やC氏への見積もりも同時平行することになる。また、D氏から購入後の品質不良クレームの案件なんかも入ってくる。これをA氏の件が終わったら、次にB氏へ、とやるわけにはいかない。そんなにのんびりしていられない。というのも、メーカーからの回答を待っていたりするからである。お客さんに仕様を確認しても待たなければいけない。つまり、仕事は自分だけでは終わらないのだ。だからひとつの案件としての仕事が終わるのには時間がかかる。本当であれば、ひとつにかかりきりになるのが集中力としては効率がいいのだが、時間の効率はとても悪くなる。


  当然、A氏へ見積もり、B氏への見積もり、C氏への見積もり、D氏からの品質不良クレーム、という仕事間でのタスクスイッチを頻繁にしながら進めていくのが通常だ。でも、これはなかなかややこしいのである。タスクスイッチは頭を切り替えるのに疲れるのである。しかも緊急度の高い単位作業をうっかり忘れたりする。これを「仕事」としてそれぞれひとかたまりとして捉えているからだ。


  そこで単位作業への分解が効いてくる。単位作業はそれぞれ独立している小さなかたまりなので、A氏の件の単位作業の後、B氏の件の単位作業をやるのは、それほど負担にはならない。つまり、緊急性で言えば、まず、A氏の見積もりの仕様確認、B氏の見積もりの仕様確認、C氏への見積もりの仕様確認、D氏のクレーム内容確認、という緊急度の高い単位作業を明確に認識して、先にやってしまうことが出来る。次にそれが終わったら、D氏のクレームのメーカーへの報告、という優先度の高い作業も簡単に抜き出して(ポストイットをはがして)、本日処理に持ってくることが出来る。そこで一日が終われば、とりあえずA氏の見積もりのメーカー問い合わせは明日でいいか、という妥協も出来る。でも、うっかりD氏のクレームのメーカー問い合わせを明日に回すと、クレームは悪化する。そんな馬鹿なと思うかもしれないけれど、実際のところ、たくさん仕事がやってくると、この微妙な緊急度の違いでの処理順序のソートなんてのは、単位作業に分けてないと出来ないんじゃないか、と思うのである。少なくとも内藤は、ポストイットに単位作業を分解し、ソートすることで処理能力を上げている。それがなければ毎日頭を悩ますことになってつらいだろう。ポストイットに書いておけば、記憶しなくていいので悩まない。処理順序は、壁とかに貼ったポストイットを見ながら順序を張り替えながら、作業順序を決定していく。全体の単位作業を見ながら割り振るので、時間配分ミスが起きにくい。


  つまり、仕事はたくさんやってくる。そうした中で、各案件の仕事にはたくさんの単位作業が含まれている。ポストイットに仕事を単位作業に切り分けていくことで、単位作業ごとに緊急度が管理できて、時間を割り振ることが出来る。これは、案件ごとに優先度をつけるよりも、格段にきめ細かな緊急度管理が出来る。しかも、その管理は、一時間に5分間使って、単位作業に分解し、壁に貼り、【今処理】【本日処理】【明日処理】【近日中処理】というふうなカテゴリに、ポストイットを貼り分けていくだけだ。視覚的に処理できるので、時間配分ミスが起きにくい。しかも仕事のクオリティは上がり、クレームは少なくなる。


  ちなみに、処理にかかる見込み分数を単位作業のポストイットに書いておくと、処理順を考えるのに役に立つ。午前中に終わるかどうかの見込みも簡単に立つようになる。この時間の単位はアバウトでいい。内藤は5分、10分、30分、60分しかない。5分は一瞬で出来ることを指す。メーカーからのメールをファイルする、とかそのレベルの仕事。10分は簡単なメールの返事を出すなど。30分はお客さんに電話するとか、メーカーへ問い合わせの英文作成など。60分は機器の動作確認など時間のかかるもの。あまり細かく時間を書いても目安なので意味がない。



  さて、ここで上でポストイットに書く例とした単位作業例の中に※印をつけたものがある。下記に再度書いてみる。

[A氏見積もりの件、メーカー回答待ち ※7/1]

というものがある。わざと※印をつけておいた。内藤はこの「待ち」ということをとても重視している。世の中、いろいろな仕事術があり、スケジューラがあるが、どれもこれもTo Doばかり管理している。「待つ」という作業は、まるで「する」ことの一バリエーションかのような扱いだが、ぜんぜん違う。「待つ」という概念は「する」という概念と対になるもので、単位作業の二大概念である。「待つ」ことを「する」ことが切り離して、「する」リストに対して、「待つ」リストをきちんと作ることで仕事は遅延要因が激減する。


  そもそも仕事とは、我々がアクションすることだけではない。むしろ、アクション半分、誰かからのアクションを受けることが半分である。


  僕らは、……他人→他人→わたくし→他人→他人…… という関係性の中で仕事をしている。つまり、必ず、誰かからのアクションがあるし、それがないと仕事が進まない。そして僕らは誰かにアクションし、その人が別なアクションが取れるようになるのである。世の中は僕らが誰かからアクションされ、誰かにアクションすることで進んでいく。


  つまり、「待ち」とは僕らが次の「する」をするためにはなくてはならないものなのだ。そんな重要な概念が「する」の中に組み込まれていいはずがない。しかも、緊急な仕事は、「待ち」も緊急だ。つまり他人からのレスポンスなどが今日とか明日までになければ困る。ゆえに、こちらも緊急度による管理が必要なのである。そして、待っていたまま忘れているということも「待ち」という単位作業をポストイットで管理することで防げる。【緊急待ち】【近日中待ち】【ゆっくり待ち】という形で、「見積もりを出した後のお客さんからのレスポンス待ち」とか、「メーカーに質問した後の回答待ち」とか、「お客さんに質問した後の回答待ち」なんかを管理できる。これには必ず作成した日の日付をつけておく。そうすると、『そろそろこちらから催促せねばな〜』と分かるので日付をつけておくことは重要だ。


  作業には「他人に対してする」ものと「他人からのアクションを待つ」ものの二つがあり、後者の「待ち」についても、単位作業として認識し、ポストイットを作って管理しておくと、催促し忘れなどがなくなり、回答が来ないことによる仕事の停滞要因が激減する。しかも『回答が来ないなあ』とか『まだかまだか』という悩むだけ無駄でありながら、かなり精神を消耗する思考を、紙に書いて管理することで排除できて、健康になれる。


  正確に言うと、「する」には二つ意味が含まれている。だから、仕事とは1/3が他人に対してアクションを「する」ことであり、1/3が他人からのアクションを「待つ」ことであり、残りの1/3が自分自身に対してアクションし、それを待っているのである。最後のものは少し分かりにくいかもしれない。例えば、「論点整理をする」、とかそういう下調べなどが該当する。とはいえ、「論点整理し、Xさんに問いかける」とまとめれば、他人へのアクションを「する」とまとめられるが、単位作業としては分離できるものは分離したほうがいい。「論点整理」した後、緊急案件の別な単位作業を入れて、その後に、「その論点整理した内容をXさんに問いかける」、という形も単位作業に切り分けておくことで、柔軟に取れるからだ。




  というわけで、以上、『内藤式 仕事分解管理術』と題して、現在の内藤がやっている仕事の管理方法について書いてみた。読み返してみると、なかなかに偉そうで決め付けているような感じだが、実のところこれが別にベストとは思わない。とりあえずこの数年間、あれこれ試しながら改良を加えつつ、こういう形になったというものを披露してみた。もっといい方法があるかもしれないし、こんなこと頭の中でやってる人もいるだろうけれども、なるべく頭を使わず、機械的に処理できるようにする参考になればと思うって書いてみたのだ。



 内藤のやりかたのポイント以下である。


・仕事はパターン化し、パターンの最適化を目指す。
・やることは紙に書いて頭では悩まないようにする。
・仕事は出来る限り細かく単位作業に分割して、単位作業ごとのきめの細かい優先度、緊急度管理をしていくことで、時間当たりの作業量と質を限界まで引き上げる。
・難しい仕事も単位作業に分解して考えることで、手に負える大きさに問題を噛み砕いて考える。
・仕事のタスクスイッチを出来る限り避けながらも、平行して進行できる作業を限界まで増やす。
・「待つ」ということを意識し、仕事の遅延要因を出来る限り減らす。しかも待っているという意識は疲れるので、紙に書くことで悩まないようにする。
・何がどう進んでいるのかという一覧性やソート性を重視して、ポストイットを使い、PCを使わない。アナログ管理。

などである。

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