市場メカニズムとは違う贈与制としての仕組み
でも、こうした町内会での縁日みたいなのはそういうのとは違う。自分たちの町という意識があって、お金を出し合って自分たちのコミュニティの子供たちを楽しませよう、という奉仕の気持ちだ。そしてこれはその子供が大人になったときに、次の子供に同じようにすることで代々循環して伝えられていく。これはお金を媒介とする市場メカニズムではなくて、市場経済以前の、与え、それを、次に与えるという贈与制でのメカニズムだ。
こういう仕組みがまだきちんと機能しているのを見ると、興味深いなと思う。贈与制は、してもらった分、お返しすることを必要とするので、面倒といえば面倒なシステムではあるのだが、しかし、社会というのは本来、こうしたシステムを持って市場経済システムを補完してやる必要があるものなんだろう。ボランティアはまさにそうなのだが。たぶん、これはもっと何かに繋がる意味がある。
例えば、僕が今年のテーマとしていることは、実は転職前の会社のときに社内向けに書いたときと同じで「良い会社とは何か」だ。言うことが生意気なので睨まれたのだが(笑)。
今期は特に、善き会社のあり方の研究を通じて目標を
達成したいと思います。会社とは、もともとは赤の他人が集まることによって
成り立つものですが、そこに何かの縁があります。
その縁とは何か。また、会社としてビジネスを行うということは社会に
対して何らかの地位を占めるということですが、その
存続のためには社会が必要とする財やサービスを供給
しなければなりません。それは何か。できれば社会で名誉ある地位を得たいものです。その
ためにはどうするべきか。個人企業と異なり会社では従業員がお互い毎日ツラを
つき合わせて仕事を進めていくことで、個人企業の合
計よりも大きな成果を得ることが会社の仕組みです。
毎日楽しく顔をつき合わせて仕事をするには、どうい
うチームワークがよいか。個人の足し算を超える成果を得る分業のマネジメント
はどうしたらよいか。さらに、従業員と会社の関係は、たとえば僅か3年の
在籍であっても双方に実は大きな意味を持ちます。会
社の平均寿命30年としても3年間は10%に当たり、その
従業員の影響は少なからぬものがあります。他方、
個々の従業員の就労年数40年としても3年間は7%とな
り、仕事人生の10%近いシェアを持ちます。わずか3年
でも双方に大きな意味を持ちます。何かの縁で出会う
双方がお互い成長し高めあい幸せになれるためには、
お互いにどのように考えることが良いか。などを考えたいと思います。
たぶん、今回の地域コミュニティにおける贈与制の仕組みは、これに少し回答を与えていると思う。