先輩と付き合う 【30歳はじめての就職のあと(4)】
(前回からの続き)
●先輩と付き合う 【30歳はじめての就職のあと(4)】
入社して暇だった僕だが、いくつか仕事の引継ぎを受けた。
Mさんという先輩(僕より若かった)が1ヵ月後に退社が決まっていて、その人の担当していたメーカーを引き継ぐことに決まった。
社内の中ではほとんど取引のないマイナー取引先に過ぎなかったし、それはPCを使った測定器ということもあって、パソコンが詳しそうな僕に仕事が回ってきた。
この機械は使い方を知っている人が退社するMさんしかいなくて、未経験の僕に数日の引継ぎで引き継がせるのもスゴイ会社だと思う。そういうところは、イケイケ的な商社イズムがあった。
最初の僕の課題はこのメーカーとの取引をどうするかだった。
まず、このメーカーとのやり取りを学ぶことにした。このころ海外とのやりとりはまだファクスが中心だった。海外メーカーとのやり取りはファクスが中心でメーカーごとにファイリングされていた。そのメーカーのファイルを取り出して1年分のやり取りを読んだ。200pくらいだったので会社でコピーして家で夜に読んだ。
そのときのことを良く覚えてる。ビジネス英語を読んだのはこれが初めてで、自分に読めるのか、そういう英文が書けるか不安だった。ところが読んでみるとたいしたことない。読める読める。ドイツのメーカーだったので先方が書いている英文は明瞭だった。それに対してこちら側の(つまりMさんの)英語はそれほどレベルが高くなかった。この程度なら僕に書けるな、と思えた。これが良かった。
最初の先輩は偉大でないほうがいい。僕にも出来そうというのは強い自信になった。なにしろほぼ30歳未経験なのだ。他人より何周も周回遅れで自信なんか何もない。そういう中で一個一個自信をつけていくのが良いと今も思う。
このとき、取引のファクスを読むようにしたのは、先輩のYさんのアドバイスのおかげだ。Yさんは、研修のときにはコミカルに笑わせてくれた人で、同期の人間は明るく気さくな人と思ったようだが、僕は違う印象があった。年齢は僕より2つ上。いろいろと苦労されていて、コミカルに話すが心は開いていなくて、実のところ新人にはほとんど教えない人だった。
そのYさんが、僕がメーカーのマニュアル(英文)を読もうとしていると、それを見て、ボソッと「そんなの読むより、ファクス読んだほうがためになるよ」と教えてくれたのだ。
確かに、英文マニュアルは必要なときに読めばよく、むしろメーカーと質疑応答している話のほうが頻出する話題で効率的だ。こうやって僕は助けられていた。頑張っていると色んな人が見ていて助けてくれる。
(次につづく)
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●先輩というもの
会社に入るといろいろな先輩がいます。というか、入社すると先輩だらけになるわけです。
ここでのポイントは、「先輩からいかに教えてもらうか。教えてもらえるようになるか」だと思います。
先輩というのは多くの場合、普通の人です。だから完璧じゃありません。先輩は偉大ではありません。正確な知識もないことが多いし、テクニックも完璧ではないし、なぜそうするのかということも弱かったりします。年齢が高くなってくると、そんな人間を敬うことなんて出来るか!なんて思えてくるのも確かです。
でも、先輩は偉大だから尊敬するとかそういうのじゃないんです。新人が学んでおいたほうがいいことをほとんど全部知っているのが先輩だし、同じようなミスをしてきたのも先輩なのです。
つまり、FAQ的な実戦が学べるのが先輩という教材であって、先輩からどれだけ教えてもらえるかというのは上達のポイントなのです。
私が、本や資料で学ぶのはなぜかというと、先輩は実は正確な知識や、なぜそうするのかについて知らないことがあるからなんですね。ビジネスの学習は複合的に補完しつつやる必要があります。本や資料で正確かつ学問的にビジネスを学び、先輩の経験からFAQを学び、師匠から熟練者の判断力を吸収するという3本柱だと思います。
先輩について、まず押さえるべきポイントとして、少なくとも自分より社歴のある人は全部先輩ということ。年齢が自分より下でもそれは先輩です。
私みたいに年齢が30近くになって入った人には必ずある壁ですが、年下が先輩になります。これに抵抗感ある人もいると思います。でも、年齢が自分より下でもその会社の社歴は自分より長いならそれは先輩です。これは鉄則。
年齢が自分より下でも先輩は先輩で、とにかく先輩として接して教えを請うて、いろいろ学ぶことが重要です。基本的なスタンスは「教えを請う」です。そうでないとうまくいきません。
「人生の先輩、仕事の先輩」というコトバがあります。これは次の本で学んだのですが、これはいい本です。年齢が上であるのは人生の先輩であるから敬うべきで、仕事が長いのは年が自分より下でも仕事の先輩であるから敬うべき。というようなシンプルな原則です。
財閥系企業の副会長が、経営不振の責任をとってウェイターになり、その職場の自分より年下の先輩から学ぶという話なのですが、読んで勇気付けられる本でありました。
実は、年下の先輩に叱られるってのは大事なポイントだと思います。辛いかもしれないけど大事。
そして、もう一つ。年下の先輩にいろいろ教えてもらえるようになる、ということも大事。
結局、年上の後輩というのは相手もやりにくいんですよね。だから敬遠したりしてしまうわけです。
ところが、敬遠されたら学べなくなってしまうのです。
だから、とにかく食いついていく。愛嬌を持って分からないことは聞いて回る。頭を下げて教えてもらう。叱ってもらう。注意してもらう。これ、すごく大事です。
ここは教えてくれるまで待ってたらダメと思います。ただでさえ、年齢ハンデ、とっつきにくさなんかあったりするわけです。そこを他人の何倍のスピードでやっていこうというわけですから、教えてもらえるかどうかは重要な生命線です。そのためには、率先して聞いて回る。愛嬌を持って食い下がる。教えてもらえるまであきらめない。分からないで済まさない。そういうことが大事です。
そうやって、他人よりも数倍の成長スピードを得るのです。
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