「松下幸之助発言集ベストセレクション〈第7巻〉商品はわが娘 (文庫) 」　松下幸之助著　1996年　PHP文庫

■[感想]

　　では、久しぶりに本の紹介でも、ということで古めながらこんなのはどうか、と。

　　松下幸之助の講演などをまとめた発言集の中の1巻。PHP文庫で安く手に入りお徳。中でも彼の語る商品論、代理店論は賛否はあろうとも読んでおくとためになる。

　　松下さんは言うまでもなく松下電器産業の創業者で伝説の人ですが、松下幸之助著となると、心得帳シリーズなんかが売れてたりするわけですけど、奇麗事が多いのであんなのあんまりおもろくないです。むしろ、こちらの講演集の方が断然面白い。当時松下さんが第一線で語っていた話が書いてあります。時代性を感じさせる部分もありますが、なるほど説得力あるな、と。

　　特にこの7巻は素晴らしい。1960-1970年くらいに成長しはじめのころのですから熱い。まず素晴らしいのは、名古屋に行って講演した最初の項目で、代理店さんに対して、松下専業でやってきなさいという話をするわけです。この語りが素晴らしい。



どれでもあなたのお好きな品物を買いなさいというような

やり方は、一見非常に得である、便利である、客を逃がさ

ないように考えられますけれども、そういう状態において

は、百件の顧客の中心、信仰の中心にはなれないと私は思

うんです。

(P33)

これは、だから、松下一本でやるのはどうか?と、代理店さんを前に松下さんがいうわけですが、でもこれは真実ですよ。素晴らしいのは松下さんは1960年のときにそういうことがすっかりわかってるということなんですよね。こんなことまだわかってない人多いじゃないですか?　ここで「信仰」って言ってるのが微妙ですけど、まあ信心持つくらい信じてやるんだという話なんですわな。



電気器具というものはまだ不可思議なものです、分からん

ものです、早く言えば。むずかしいものです。やはり皆さ

んを信頼して、皆さんを中心として買う意思が決定される

わけです。

皆さんが、「どれがいいか、あんたの好きなの買いなさい」

というような頼りないことではいけない。「コレが一番い

いんだからこれにしておきなさい。値が高くても安くても

私に任せなさい、私を信用してください」というようなこ

とをほんとうに心の底から叫ばれるのであれば、私は顧客

は動くと思うんです。それは百人が百人は動かない。しか

し、少なくとも十人のうち六人までは動く。十人のうち六

人が動けば、それはほんとうに堅い顧客である。それは皆

さんの信仰者である。そういうようなものだと私は思うの

です。

　そういうことを中心として、全国的に日本の文化生活を

高める、電化生活を高める、そしてじめじめとした暗い生

活をこの世の中から除いていくというのが、われわれ生産

者、また販売者の使命だと思います。

(P36-37)

どうですか?　この熱いアジテーション演説。最高ですよ。時代を超えて迫ってくる迫力。この物あまりの時代にこそこういう考えが必要なんだと内藤は思います。そう思って作ること、売ることが必要なんです。こう思えないと正直なところ売るのは難しいと思います。ま、あんまりやりすぎるとマルチっぽくなるわけですけど、まあこれくらいの心意気がないと駄目だなあと思うのです。

この紹介したあたりのところはまだ最初のほうのところで、過剰生産になったときの話とかいろいろあって、どれもとてもよい話が詰まっています。このシリーズの中では内藤としてはこの7巻が本音とアジテーションぶりが素晴らしく、オススメです。文庫だし、中身もアマゾンで見れたりするのでちょっと見てみて下さいな。というわけで★4個。

なるほど、黄金期の松下幸之助さんの語りはこうも熱いかと知れば、心得帳シリーズなんか読んでいられんでしょう。はは。下に参考までに他の巻へのリンクも作っておきます。どれも中身検索できるので見てみれるのもいいですな。そこらへんPHPは対応がいい。

(作成2006.09.11)