8年の遅れを挽回する基本的な考え方 【30歳はじめての就職のあと(5)
お待たせしました。つづきです。
●8年の遅れを挽回する基本的な考え方 【30歳はじめての就職のあと(5)】
まあ、なんとか入社できた僕であったが、ホサれ気味で、ヤバかった。それに対して猛勉強しまくるというのが前回までに書いた方法。
とはいえ、それは決定打に欠ける。他人より8年遅れを挽回するにはもう少しショートカットを取る必要がある。
普通ならこうかんがえる。成績をがんばって上げる、と。でも、それは違うと思う。
それって、同期と同条件でヨーイドンで競争するようなもので、そんなことしたら負けるに決まってる。もともと、僕なんか走らせたら遅いほうだ。同条件で競争すると損だ。これが基本的な発想。
どう考えるかというと、自分にとって有利なハンデが使えるところを探す、ということ。
今までの人生で自分が頑張ってきたり得意だったりすることがたぶんあると思う。それを仕事に組み合わせる。過去に自分が頑張ってきたり、得意だったりすることというのは、要は自分が先に進んでる部分だから、それを使うと自分に有利ハンデで進められる。たぶん、みんなそういう部分てのがある人が多いと思う。あとは、それをどうやって仕事に組み合わせるかというアイデアだと思う。
というわけで、僕に回ってきたのは社内で使い方の分かる人間がいないPCを使った測定器だった。測定ヘッドとPCIスロットに挿す制御ボードがついているもので、英文マニュアルを読みつつ使い方を把握していった。
その過程では社内のさまざまな人の助けを借りた。他人の助けをキチンと借りられる能力ってすごく大事。
あとで上司になるI課長にはこのころに教わって親しくなったりした。I課長は機器の使い方を少し知っていて、僕はPCの仕組みを知っていたので協力して把握していくことが出来た。
ここで、PCの知識が活きた。これが僕にとっての有利ハンデの一つだった。僕はPCは詳しいほうで、小5のときに買ったJR-200という松下のパソコンで遊んで以来、ゲームのプログラムを雑誌に投稿したり、6800のマシン語も学んだりした。その後、ポケコンPB-200で遊んでいたり、MZ-2500をジャンクで買ってきたり、インターネットは98のDOSノートにWindows3.1とカメレオンインターネットを使って接続したりと、PCには過去に多くの時間を費やしてきていた。これらは結局仕事にはしたくなかったし、なってないのだけど、ここにきて身を立てる手段となったわけなのだ。つまり、過去に投入したエネルギーって、意外に使い道があったりして、芸は身を助けるだなあとか思う。
社内で教える人間がほとんどいなくて、使い方が分かる人間がいない機械の担当が回ってくるというのは、なかなかにブラックな話と思うかもしれないけど、社内的に言うと僕自身が社内的に扱いに困る人間で、期待されていなかった。だから、振られる仕事もあんまりないし、振られる仕事も皆が避けているような仕事だったりしたり。
とはいえ、そういうのって結構チャンスだったりする。
というのも、目立たない仕事や期待されていない仕事ってのは、割合と自由に出来るわけで。つまり、自分の有利ハンデを組み合わせてやりやすかったりする。目立つ仕事だと失敗すると目立つし、他の人もいろいろと介入してくる。だから、目立たない仕事や、期待されていない仕事というのは、そう悪いものでもないと知って欲しい。
というわけで、人気のない仕事とか振られても腐らずにそれをうまく活用して欲しいなあと思う。
もう一つ、8年の遅れを挽回していくために必要なことがある。
周りの期待を大きく上回ることをやる、ということ。これすごく大事。
振られた仕事をこつこつやる、というのは悪いことじゃないけど、それでは何年やっても遅れは挽回できない。だって、それ、当たり前だから。まじめな人は結構やってしまいがちで、実際に何人か知ってるけど、それは正直なところ、もったいない。仕事というのは、その人だからこそ出来た、というのが付加価値で、それがあってこそ遅れが挽回されていくものなんだと思う。
与えられた仕事を普通にこなす、というのは平均点でしかなくて頭一つ抜けるなんて出来ない。
じゃあどうするか。
自分に振られた人気のない仕事を、自分の特技で、周りの期待を大きく上回る成果を出す。
人気のない仕事 + 自分の特技 = 周りの期待を大きく上回る成果
これしか、8年の遅れを挽回する方法はないと思う。むしろ、人気のない仕事、目立たない仕事というのは逆に有利。期待されていない度も高いから、ちょっとしたヒットも注目度が上がるから逆に有利になる。
僕の場合どうしたかというと、その測定器のソフトは英語版しかないので使いにくいなあというのがあって、メニューを日本語化するソフトを知っていたので、それ使って日本語版作ったら面白くない?と思ったのだった。
で、思ったらすぐやってみた。10月に入社して、11月くらいから機器の操作を覚え始めたので、12月の中旬にはメニューを日本語化したものを作ったと思う。とにかく、思いついたらすぐやった。
出来てみると、なかなかいい。さっそく上司に見せる。こういうときは、きちんと適切な人にアピるのは大事。僕の直属の上司のO課長はいい人で気に入ってくれて、早速社長にアピってくれた。
すると、社長も「おお、これはいい。」というと、30分くらいすると「来月、アメリカに行け」という。これをメーカーに見せに行って来い、と。これを作ったのはお前だから説明するのはお前しかいないだろ、と。当時の社長はとても引き立ててくれたのであった(その後、微妙な関係になるのだが)。
これで、入社3ヶ月で海外出張が決まった。社内でも最短である。
期待を上回る成果を出すと注目される。すると次のチャンスが転がり込んでくる。これはもう一つの法則。というのも、こいつは何かやるやつかもしれない、と思われるから。
こいつはなんかやりそうと思われるとチャンスはまた転がってくる。周りはきちんと見ていてチャンスを与えてくれる。まずは1個ヒットを飛ばすこと。すると次がすごくラクになる。
人気のない仕事 + 自分の特技 = 周りの期待を大きく上回る成果 → こいつはやるかもしれない。チャンスを与えてみよう → さらにチャンスが降ってくる
それで、翌年の1月にサンフランシスコの大規模な展示会に行ってくることになる。これが初めての海外で、緊張したものだった。ちなみに、この出張でも、もう一つ、期待を上回ることをやった。新しいメーカーを見つけてきて代理店契約をしたのである。入社4ヶ月弱で、これも最短。運もあるけど、初めから狙って下準備していった。これも8年の遅れを取り戻すため。1個のヒットのあと、もう一個連続してヒットを出すつもりでいたのだ。連鎖することで、こいつは本物だ、となる。そうすることで8年間を一気に短縮にかかった。
そのあたりはまた次回に。
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