ビジネス本マニアックス

内藤による働く人のためのビジネス本紹介サイト⇒自身の30歳の就職活動についても書いたり。10年くらい更新止まっています。⇒「はてなダイアリー」から「はてなブログ」へ移転しました

最初は勉強しまくり 【30歳はじめての就職のあと(1)】

えと。読んでくれるかたが増えて嬉しいので、そろそろ本の紹介を再開しようと思ったのですけど、就職してから編も書こうかな、と。


大学5浪、30歳で就職活動したときのこと(2)

この続きなんですけども、いやー、やっぱりハンデあるだけに採用されてからも大変でした。もともとハンデあると自覚があったので苦労ってことはないんですけど、ちと工夫が必要なのです。その話を書いていこうと思います。たぶん私のようにハンデのある人に参考になるのではないかと思います。

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(前回から続く)



●最初は勉強しまくり 【30歳はじめての就職のあと(1)】


70通くらい履歴書を書いた末に、業界では中堅の専門機器輸入商社に採用が決まり、2000年10月1日から出社となった。


同期は中途採用ながら僕を含めて5名。サラリーマン経験者、ほぼ新卒など23〜30歳くらい。その半年前にも同じくらいの年齢層で5名ほど採用していて、その会社では業績最高潮でちょうど採用ラッシュだった(おかげでもぐりこめた)。僕と経験者で同年齢くらいが1人いたが、未経験では当然ながら最高齢だった。


仕事は営業職。欧米の先端機器を海外の学会併設の展示会で探してきて国内の国立・民間の研究者や開発者に販売するという仕事で、割合と物理知識が必要だった。社内に技術サポートがあまりない会社で、自分で商品を見つけてきて、カタログを作って売り込みをして、技術サポートも製造元と協力して営業マンがなんとかするという、それぞれ営業マン個人が個人商店的な動きをしていた。こうした環境は後から考えると自由にあれこれ試せてよかったが、未経験の新人にはキツい面もあった。(こう考えると、いわゆる「ブラック」な会社なのかなー。まあでも中小企業なんてどこもそういう意味ではブラックだと思います。ワイルドっていうか。はは。)


いちおう、基礎知識についてレクチャーが1週間ほどあったが、あとはOJTでということになった。このあたりは中小企業はどこもそうだろうと思う。



このとき僕が何をしたかというと、とにかく勉強しまくった。


まず、物理知識などテクニカル知識が重要に思えた。何しろフィールドエンジニアなどがいないのだから、技術サポートを自分で何とかする必要がある。だから知識面の強化に走った。ファインマン物理学を読み直したのもこのころ。僕は文系だったが、基本的に理系なので興味があった。光の波長やら偏波や反射について知る必要があった。


製品の入門書などを社内を探して読みまくったし、倉庫にあった業界雑誌も過去分をあるだけ読んだ。これには半年ほどかかった。


教えてもらうのは待たずに勉強しまくった。社内の文書を探しては読んだ。こういうときに待っていてはダメだと思う。やってはいけないと注意されること以外は全部やっていい。注意されたら止めればいいだけのこと。資料は数千ページくらいコピーしまくったりしていたが、見逃してもらえていた。熱心にやっていたからだと思う。


とはいえ、そうやって学んだ物理知識だけど今でも全部理解してない。それは今でもその輸入商社業界では知識力で上位にいる自信はあるけど、開発者になれるレベルではない。では勉強は無駄だったか?というとそんなことはない。少なくとも、その業界の商社マンの中で頭一つ抜けるのに役立った。何らかの強みを作っていかないと人より優れていくには難しい。その一つの手段として、知識水準で業界の平均レベルを超えていくというのがあった。


ちなみに、その会社は文系を問わず採用していたので、専門知識に関してはどう考えていたのかというと会社の社長の方針は明瞭だった。「僕らは分からなくてもいい」というのだ。なぜなら「作っているメーカーもプロ、買う人もプロ。僕らの仕事はその両者をつなぎ合わせる手伝いをすること。」という。確かに商社らしい発想である。とはいえ、この論理が成り立つのは顧客がイノベーターからアーリーアダプタまで。マジョリティになってくると、サポートがないとどうにもならないので僕は数年後に反対することになる。たまたま、この会社の成立から成長時には顧客層がイノベーター中心だったのでそういう成功法則を抱えていたに過ぎない。


確かに、「僕らは分からなくてもいい」という、会社の社長の見解も一理ある。一般的なアドバイスとしては悪くないと思う。何しろ先端的な研究で、国内の大学でもやっているところは限られて、研究者も、東大、電通大、慶大の大学院卒が多かった。それを完全な文系出身の営業に、研究している内容を分かれとは言えない。ある種の割り切りは必要悪であったに違いない。


とはいえ、僕みたいにハンデ戦を戦っている人間が一般的に良いアドバイスを真に受けて平均を超えることは出来ない。当時、僕は物理が得意であった。とはいえ、僕は開発できるレベルから遠かったが、専門機器の輸入商社という世界では、どうも社内でも業界でも得意な人間はまれなようだった。その能力を活かすなら、ほかの営業マンが苦手としている製品の本当の意味の理解、物性の理解をしたほうがアドバンテージを得られる。そういう考え方は当時からしていた。


参入障壁の話になるが、これは個人スキルでも当てはまる。マスターするのが難しい技能というのは、皆が最初から敬遠する。だから、マスターするには時間も労力もかかるのだが、いったんマスターしてしまうと今度は競争相手が少なくなるので競争が格段に有利になると知っておいたほうがいい。逆に、簡単にマスターできることは、どいつもこいつも参入してくる。だから、マスターしやすいのだが、競争は激烈になって差がつかない。


つまり、このケースでいうと、製品の物理知識は難しくてマスターに時間がかかるのだが、いったんマスターすると、営業の中でも製品にずばぬけて詳しい営業という定評が出来て得意客ができる。また、同じように出来る奴が少ないので比較的長い期間、優位性が維持できる。他方、誰にでも出来るカタログをお客さんに持っていくとかいうことをやっていると、皆が出来るので営業間での差がつかず苦戦する。



さらに、この物理知識は入社して4ヶ月後の海外出張で、製品を発掘して代理店契約を結ぶという快挙になるのだけど、それも製品の識別が物理知識で出来るようになっていたからだ。


(つづく)

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