ビジネス本マニアックス

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2005-08-18 ほりえもん出馬に見る自民党のマーケティング


  亀井新党はダメだ。すごくダメな匂いがする。ていうか、新党というのに、ピークをとうに過ぎた爺さんばっかりで、新党結成して世の中変えていくという気概が見えない。まあ、追い詰められて結党したわけだけど。


  いやー、それにしてもこうやって見てると凄い。自民党マーケティングはずば抜けている。非常に一貫性が高いし、メッセージ性も高い。非常にうまいブランディングの手法やら、比較的最近のマーケティング手法をきちっとやっている感じ。対抗馬の出馬情報も出していきかたがうまい。ほりえもんに出馬してもらうということと、その情報の流し方、亀井氏の広島で出馬希望など、狙いに狙ったストーリーの作り方のうまさ。


  もともと、小泉さんはこの手の勝負がうまいが、最近ますます長けているように見える。たぶん、いいブレーンがいるに違いない。そして、小泉純一郎自身が、ブランドを体現するのに十分な見栄えのよさ、主張の首尾一貫性と、今までのストーリーを持っている。この資源をフルに活かして自民党執行部は選挙マーケティングをやっているように見える。こんなことやられたら、古い頭しかない亀井さんとか、寄り合い所帯で決定が出来ない症状に陥っている民主党あたりは、振り回されるばかりだ。国民新党結成も、結局のところ、自ら望んだよりも、ハメられた感じだよね。


  まあ、こういう勝負は負けるほうが悪いんだけど。結局、負けるということは、戦略もポリシーも勝算も何もなく行動しているということだから。政治は、お互いに日本を良くする為にそれぞれの考えでいろいろな案をぶつけて進めていくものだから、戦略やらポリシーやら勝算がなく行動されては困るんだよね。そして、そういうポリシーや勝算というのは、持っているとなんとなく周りに伝わるもので、国民はテレビカメラを通じて感じ取ってしまう。見た目ってすごくはっきりと伝わるから凄いし、怖くもある。


  結局、この経済成熟期となった日本では、経済成長という分かりやすいストーリーがなくなってしまった。だから、過去のようにコンセンサス重視で、経済成長プラス弱者救済、ということをやっていればなんとなくうまく行った時代とは変わってしまっている。今までは、とりあえず、目標は経済成長で、そのための施策がメインにおいて、野党やら与党の反主流派が、弱者救済を訴えるので、その意見を聞き入れて、政策をミックスしてバランスすればよかった。経済成長で皆が合意して、そのかわり福祉も忘れないでね、というやつである。亀井さんもたぶんそのつもりだったんだろう。ところが小泉さんはぜんぜん話を聞き入れるつもりがなかった。というのも、もはや経済は成熟化し、経済成長が目標にならなくなったんだよね。むしろ、持続的な社会の存続のために、適度なインフレの維持と、政府支出先の見直しが課題になっている。政府支出先の見直しとなると、今まで分配されていたお金の流れが変わるわけだから、意見が割れる。それを成長期には、全体に多く配分していくという成長期待の支出でごまかしたが、今ははっきりと経済の成熟期に入っているからそんなことは続けられなくなった。国債の残高が巨額になりすぎてしまったのだ。だからこそ、今の政策の決断は断行が必要となってしまう。単純な、経済成長という目的がないので、目標が多様化してしまう。そうした中で、日本をどうして行くべきか考えて、何か決断して実行していかねばならない。小泉さんが100%正しいかどうかはわからない。ただ、今までのコンセンサス重視と成長期待というやり方はもはや成り立たないことは確かなわけで、それはもはや昨日までの繰り返しは出来ないということ。それゆえ、小泉さんは期待されていると思うんだよね。


  結局、この経済成熟期の時代は、目標が多様化して決めにくい。経済成長期は目標が単純で、それにしたがってストーリーを作るのもわかりやすかった。ところが、目標が多様化した経済成熟期では、何かひとつポリシーを持って、これという目標を決めて、それにしたがってすべての仕組みを組んでいくことが必要になる。つまり、既存の成長ストーリーに乗っていくのではなくて、自らが自らの信じるところの目標を明らかにし、ストーリーを作り出していくことが必要になる。その点で、小泉さんはずば抜けて、そのストーリーの作り方とアピールの仕方がうまいし、それは一朝一夕に出来るものではないので、強いんだなあと思うわけなのである。そして、それは見方を変えれば、非常にうまいブランディングであり、マーケティング手法の選挙への実践になっているのだ。


  そういうわけで、今回は自民党マーケティングはどのようにやっているのか、としてみるととても面白い。どうやら「刺客」も自民党側が言い出したのではないようで、「刺客」「ハイジャック」「マドンナ」等、古臭いキーワードを連発しているのは、国民新党側とか野党側が多いようだ。そう見ていくと、やはり、自民党側はマーケティングのプロがいるよね。不謹慎かもしれないが、こういう成果を実際に適用していくのを見るとワクワクしてしまう。はは。



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