ビジネス本マニアックス

内藤による働く人のためのビジネス本紹介サイト⇒自身の30歳の就職活動についても書いたり。10年くらい更新止まっています。⇒「はてなダイアリー」から「はてなブログ」へ移転しました

 内藤は実はこれを紹介するのはどうしようかと思った。こんなこと教えたら『もったいない』からだ。でも、そんなことケチってもしようがない。第一、このサイトはこういう良い本を紹介するために始めたものだからだ。
 この本で紹介される『高確率セールス』というのは革新的である。というか、内藤が1年前に読んだときは「すげえ」と思った。とても斬新である。というのも、この本で紹介するセールスは説得ではないからだ。買う人間を売る側から選別していくところがミソだ。
 ちょっと分かりにくいかもしれないので例を出してみる。いわゆる普通の新規開拓のセールスというのは、こんな感じである。
 見込み客を見つけたら電話をかけて、ぜひ説明に伺わせてください、と言ってアポを取る。そして訪問したら商品説明し、質問に答え、見積もりを出させてもらい、場合によってはサンプルをサービスし、デモンストレーションをし、説得の末、注文をもらう。
 いやー、これは大変やね。内藤もやったけど。特に近年はうまくいきにくい。というのも、需要が供給を上回ってる右肩上がりの成長期なら、顧客も実はほしいとか思ってるから受注になりやすいんだが、最近は停滞期だから、顧客もそれほど乗り気じゃないんだな。買わなくてもいいと思っていたりする。乗り気じゃない人を説得して買わせるのはえらい大変なのである。


 ところが、この本で解説される『高確率セールス』はそんなやり方はしない。こんな感じである。

 見込み客を見つけたら電話をかける。ここまでは同じだ。短く商品のメリットを説明したあと、次にこう尋ねる。「興味ありますか? 興味があれば説明に伺いますが?」 ここで興味がないと応えたら「そうですか」と言って電話を切る。そして次の顧客に電話をかける。ここが重要だ。決して説得しないのである。次にアポが取れたら、まず相手がどうして自分のところの商品の説明を聞きたくなったかを聞く。そして商品説明してほしいかどうか尋ねる。ここでも商品説明なんかいらないと言ったらここで打ち切って帰る!! してほしいといわれたら、商品説明をし、見積もりがほしいか尋ねる。ここでも見積もりがいらないと言えばそこで打ち切って帰る!! 見積もりがほしいと言われれば、見積もりを出す。つまり、営業プロセス中にまったく説得しないのである。そして、毎回だが、営業マンに来てほしい、商品説明をしてほしい、見積もりをしてほしいと顧客の側から頼ませる。頼まない客は商談を打ち切る。見方を変えると、商談に対して、顧客の徹底したコミットを要求するのだ。

 ね? 非常に面白いでしょ。営業とは説得だという手法とは逆である。説得ではなくて、顧客の徹底したコミットを求める。アポください、見積もりださせてください、デモさせてください、サンプル評価してください、というお願い営業とはまったく異なる。
 それで、効果あるのか? と思う人がいるだろう。うそ臭いなー、と。内藤もちょっと疑った。でも試した結果から言うと、効果ある。かなりある。特定の条件を揃えるととても効果的なセールス手法だ。内藤はこれを使って営業マンでありながら週のほとんどを社内ですごし、電話で話して営業成績を上げている。高確率セールスとは、いくら時間をかけても買いそうにない客に営業時間をつぶさないで、買うであろう顧客に時間を使うための顧客選別と顧客のコミットを要求する手法である。


 ここでこの『高確率セールス』が成立する条件を述べておく。これは内藤の見解である。
 まず新規開拓セールスであること。これが大切だ。リピートオーダーを取るようなルートセールスでやってはいけない。
 次に、マスマーケティングでは使えない。限られたマーケットのコンシューマーにせよ、ビジネスにせよ、小さなマーケットの開拓用である。つまり、すでに確立されたマーケットで、決まった取引先とビジネスをしていくようなものには使えない。
 さらに、この手法はマーケティングと一体化していると言っても良いので、会社がこのセールス手法を採用するか、自分の裁量で自分の部門だけはこのセールス手法が取れるように出来る権限が必要である。
 商品について言えば、この高確率セールスは、どんな客でも時間をかけて説得し倒せば買うような商品は駄目だ。というのも見切りをどんどんつけていくからだ。逆に、ある特定のタイプの顧客にはとても感謝されるような特徴を持った商品ならいける。その商品の特性を理解し、マーケットの状況を理解し、どのような客が買えばこの商品はもっとも力を発揮するか、ということが明確に分かっていることが必要だ。売る側はその商品と業界のエキスパートである必要がある。


 つまり、製品を知り尽くした上で、顧客像がとても明らかになっていることが必要だ。このセールスプロセスでは、いかに効率よく、その顧客に辿り着くかということをやっているのだ。ゆえにセールス中に相手が買うかどうかの選別が可能なのである。マーケット内にいる数パーセントくらいいる「買う可能性のとても高い顧客」の存在が分かっており、それに対して、まず広告などで訴求し、テレアポで絞込み、面談で絞り込んでいって、アプローチしていくのである。ちなみに顧客像が明確でないのにやると必ず失敗する。
 それから、いちいち、〜しますか?→お願いします、というやり取りをすることで、顧客は本件に強くコミットすることになる。強くコミットしない顧客は商談を打ち切るので残っていない。逆にそうすることで、相手の買う気持ちは強くアップし、買う可能性も上がる。顧客選別だけではない効果があるのだ。
 ちなみに、独りで売れている営業マンは結構これに似たようなことをやっていたりすることがある。売れない営業マンに限って、会社の営業マニュアルにそって忠実にやっていたりするのだ。確かに右肩上がりの成長期には闇雲な営業でも成績は上がったかもしれないが、現代のような停滞期になると買わない顧客、説得が効かない顧客のほうが多いので、選別はとても重要なのである。内藤はそう信じている。


 というわけで、新規開拓営業で、その商品をどんな顧客が買えば幸せになるかという顧客像が明確になっている営業職(商品とマーケットを知りぬいた人)で、マーケティング活動もできる権限がある人ならば、このやり方を知らない人には超おすすめ。ていうか知らないと極めて損でしょう。この後に類書を紹介するのでそちらもどうぞ。