■
なんと600ページ近くもある分厚い本だが、まあそれほど密度が高いわけでもないので読むとなると一日で読めたりする。毀誉褒貶はあるがソフトバンクを築いた孫正義氏の伝記である。
まあここ何年もソフトバンクグループについてはあれこれ批判もあったりする。マスコミは、成功しているときは褒め称え、業績が下降し始めると批判しだす傾向にあるが、内藤はまったく同意できない。そもそもマスコミはマスコミュニケーションのためのメディアを支配する利権ビジネスの色が濃いせいか、商業に対して鈍感だと内藤は感じている。商売というのは、絶対的に正しいやり方なんてあるわけがない。ある時代にはある方法がうまくいくということがあるに過ぎないと内藤は考えている。環境に対して最適なやり方があるということなので、現在、自分の置かれている立場で自らのビジネスをうまくやろうとすれば、自分の環境に合わせた最適な方法を見出さねばならない。そのためには、自分の状況を分析することから始めるわけだが、その過程で、こうした伝記的な資料というのは役立つのだと内藤は思う。こういう条件下だとこのような手法が有効、という経験則が得られるからだ。たくさん事例を集めると、自らのビジネスに応用できる事例も出てくるし、失敗した場合も、失敗要因の解析にも事例は役立つ。そういう意味で、この本は、今後ソフトバンクグループが破綻しようと繁栄しようと、少なくとも今まではここまで成長できたわけであり、その条件下において最適な方法があったというわけで、役に立つ事例なのである。
ただまあ、内藤としてこの本で一番役に立ったのは、海外企業との交渉シーンだ。交渉の仕方としては大胆なのだが、それでいて、ちゃんと業界の行く末を読み、自分の未来を読み、相手の未来も読み、その上でメリットがお互いにあると確信して相手にも強くビジョンを語り迫っている。内藤は読んで、「あー、なるほどなあ。ここまで考え抜いて確信が得られれば大胆にやってもいいんだ〜」と思ったのであった。
そしてさっそく自分の仕事で使ってみた。いいなと思ったらやってみたほうがいい。さすがに内藤も失いたくない取引では最初はやらなかったが、ところがそれでもこうした交渉の大胆さというのは効果的だった。「俺はあなたのところの製品をこうやって売っていってこうしていくつもりだ。」と自分として確信を持てたことを熱く語ると、やはり相手も乗ってくる。ビジネスってのは情熱やねえ、としみじみ思ったのである。まあそのためには、本当にいいことを実現したい、という信念が必要だが、それさえあれば、やるべきことをやるためには大胆だろうとすぱっとやったほうがいいのだな、と学べた一冊だった。
また、この本を読むと、孫正義氏の驚異的な行動力に驚かされる。そして、ビジョンがあるが、しかし、素直に他人の意見を聞き入れるべきときは聞き入れていたりする。やはりそういう資質は必要なのだなあとしみじみ内藤は思った。いやまあとにかく凄い行動力と素直さである。
というわけで、この本は、内藤には、孫氏の海外企業との大胆な交渉が学べる一冊でしたのでおすすめです。とりあえず星二つくらい。だって分厚い割にはね。