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この本も味わい深い本である。ここのところ将棋の棋士の話を紹介しているので、この本を紹介したい。
プロ棋士は、子供のときから将棋連盟が運営する奨励会に入会しその中で鍛えられ、毎年2名の者だけが選抜されプロ棋士になる。ほとんどが奨励会から脱落していく。この厳しい選抜がプロの勝負を素晴らしいものにしているが、他方、その一部のプロを生み出すために多くの棋士の候補生たちは脱落していく。彼らは人生をかけた勝負に、将棋では敗れてしまうのだ。結果的に敗れていくことになる青春を描いた作品だ。内藤には、なんで人は失敗してしまうのだろう、と悩み、自分の人生を再度考えさせられる本だった。
内藤は、この本につい自分の20代を投影してしまい、泣いてしまった。泣かずには読めなかった。そして、今の人生を大切にしようと思った。というのも、内藤は、大学に23歳で入学した。理由は内藤が頑固だったためだ。大学受験は落ちて落ちまくった。自分の好きな科目しかしなかったから当然とも言えた。特に英語が嫌いでまったくやらなかった。最終的には自分の偏りを理解し、英語を強化することで大学に入学することができた。それが今では英語を使って仕事をしているのだから人生とはわからないものだが、今日に至るまで、屈折の歴史だった。また、大学在学中に、公認会計士受験をはじめ、これもまた失敗につぐ失敗を重ねる。五度目に失敗したあと、あきらめて今の会社に入社することになる。ここで内藤は意外に才能を発揮することになるが、いまこのように楽しく仕事をすることになるとは、その苦闘の最中にはわからないことであった。内藤は18歳から30歳までをすべて受験に費やした。結局は失敗に終わった時代。それと重ね合わせて、つらすぎる自分の20代を振り返ることができた。そういう意味で助けてもらった本でもある。
というわけで、人生の成功と失敗の裏表について考えさせてくれる切ない青春のこの本はおすすめです。「純粋なるもの」と合わせて読むとなんとも考えさせられるのでぜひともセットでおすすめです。