ビジネス本マニアックス

内藤による働く人のためのビジネス本紹介サイト⇒自身の30歳の就職活動についても書いたり。10年くらい更新止まっています。⇒「はてなダイアリー」から「はてなブログ」へ移転しました

未来はわからない (2004年6月20日)


 景気が回復基調にあるようだ。みんな景気が良くなるだろーなー、とぼんやり思ってる。(邱永漢さんは、中国の経済成長による素材不足に引っ張られているだけだとのことで、ちょっと気に留めておくと良いかもしれない)


 内藤の仕事のほうも、ちょっと良い感じだが、実際のところはそれほど経済が一様に好景気になるというほどでもないように思う。だから、好調といわれる企業がリストラを継続していたりするのもそういう理由だろう。


 さて、それでなのだが、現在は、成長期経済とは違って、予想が立ちにくい。成長期経済というのは、一時的な多少の落ちこみはあるかもしれないが、グラフに描けば右肩上がりの単調増加が予想できるので、予想しやすい。少なくとも精神的には。


 本当のところは、成熟期経済だろうが、成長期経済だろうが、未来はわからない、ということは実は同じなんだけども、成長期経済のほうが、マーケット規模予想、マーケット成長率、マーケットシェアなんかの方程式のようなものが単調な函数になっているので、予想しやすい。そのため、なかなかそういう古い発想から離れられない。


 未来はわからない、ということは僕らをとても不安にさせるし、少しでも未来のことを知りたいと思う。だから、今ではあまり役に立たなくなったかもしれないが昔の成功方程式に頼りたくなる。例えば、このビジネスのマーケット規模は20億円で、年に10%ずつ成長が見込め、三年後のシェアを30%取得を目指す…、みたいな。


 しかし、そんなものほとんど役に立たない。まあ昔からの消費財とかそういうマーケットは教科書的な図式で説明できるものも多くあるんだけれども、これからビジネスをやろうとしている人にはほとんど役に立たないと思うんだよね。もちろん、経済は思惑で動くから、そういう計算は多くの人に共有されているから、まるでそれが成立しているように見えるかもしれないけれども、でも単に皆が信じているだけかもしれない。


 現在の経済は、潜在的な供給力が需要より上回ってしまっているから、僕らが「○○マーケット」として捉えているものが本当に存在しているのかどうか怪しくなってきている。みんな単に惰性で買い続けているだけかもしれない。惰性で買い続けているだけで、それを店頭で選ぶときに、ちょっとした気まぐれで商品を選択しているだけかもしれない。マーケティングの努力なんて、その気まぐれを少しでも自分たちに有利にしようとする試みなのかもしれない。それは、みんながそもそもそれを買わなくても良いことに気がついてしまったり、今よりずっと違う良い方法に気がついてしまったりすると、あっという間に消えてしまうようなはかないものなのではないかと内藤は思うのである。


 だから、市場規模100億円とか、市場成長率20%とか、そういうのを聞くとむなしくなる。そういう予想が五年後にどうなったか検証してみればわかる。予想なんてほとんどはずれる。確かなものなんて何もない。昔から確固として存在している(ように見える)マーケットも、それはみんなの幻想や思い込みがちょっと強いだけで、これさえも何か大きなインパクトがあれば目が覚めて惰性で買うのを辞めてしまうかもしれない。


 そこで、三菱グループによる三菱自動車支援を見るのだが、三菱グループ三菱自動車に未来を見て支援するのだろうか?と思う。もしかして、自動車マーケットは年間○兆円あって、10%くらいのシェアを取れれば…とかいう電卓たたいているんじゃないのかなあと思うのだけれど、どうなんだろう。


 どんな大企業だって、お客さんがそこの商品を買わなくなったら倒産に追い込まれる。企業グループの力なんてたかが知れてる。しかも今は需要よりも供給力が上回る時代である。正直なところ、三菱自動車が車を作らなくても、代替できる日本メーカーは数多くあるし、海外メーカーも多くある。三菱自動車がなくてクルマが買えなくて困るというお客さんはいない。もうそういう時代なのだ。


 未来は分からない。しかし、もしもだが、三菱自動車のクルマを誰も買わなくなったら、三菱グループが総力を挙げて支援しても再建するのは不可能だ。三菱自動車がどれだけ大企業で、歴史があろうとも、皆が気がついて、惰性で買うのを辞めたとたんに、「マーケット」という幻想は一夜で消え去ってしまう。クルマを買う人はたくさんいても、三菱のクルマを買う人がいなくなってしまう、なんてことは容易にありえる。それが成長期のように売り手優位ではない時代の一つの特徴であると思う。


 ゆえに、成長期のようなマーケットシェアでモノを考えても、あまり役に立たないと思う。もちろん多少は役に立つし考えるけれども、マーケットとひとくくりできるような同等品の競争は、厳しくなるばかりであると思う。そして、小さなビジネスの場合、マーケットシェアなんて考えないほうがいいとも思っている。


 代わりに必要なのは、誰の役に立つか、だと思う。あなたの商品やサービスは誰の役に立つのか? あなたでなければならない理由は何か? 未来は常にわからない。明日のマーケットはどうなるかわからない。しかし、誰の役に立つかは今日わかる。


 そして、必ず今日より良くなった明日がやってくる。10年前よりも今日は良くなっている。10年後は今日よりも良くなる未来が必ずやってくる。毎日少しずつ良くなっていく。僕らの提供する商品やサービスが、明日を良くしていく。

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